お子さんのいないご夫婦

お子さんのいないご夫婦

お子さんのいないご夫婦

お子さんのいないご夫婦にとって、お二人の未来をどうデザインするかは重要です。これまで築いた財産を、残されたパートナーが安心して受け継ぎ、穏やかに暮らせるよう、準備が欠かせません。


遺言書がないと、法律上、ご自身の兄弟姉妹にも相続権が発生し、残された配偶者が困ることもあります。また、亡くなった後の手続きや、もしもの際の財産管理も、事前の話し合いと、任意後見契約や死後事務委任契約といった法的な準備が不可欠です。

①遺言書の必要性

配偶者以外にも相続権が及ぶケース

民法では、亡くなった方に子どもがいない場合、その財産は配偶者と、亡くなった方の親、あるいは兄弟姉妹が相続人となります。
仮に夫が亡くなり、妻にすべての財産を遺したいと願っていても、遺言書がなければ、夫の親や兄弟姉妹にも相続権が発生してしまうのです。その場合、妻は夫の親や兄弟姉妹と遺産分割協議を行わなければなりません。
もし関係が疎遠であったり、意見がまとまらなかったりすれば、預貯金が凍結されたままになるなど、残された妻が財産を自由に使うことができず、生活に支障をきたす可能性もあります。
遺言書で「すべての財産を妻に相続させる」と明確に意思表示することで、このような事態を防ぎ、妻の安定した生活を守ることができるのです。


遺言書のメリット

遺言書がない場合、相続手続きは非常に煩雑になります。
たとえ相続人が配偶者のみであったとしても、亡くなった方の預貯金を引き出したり、不動産の名義を変更したりする際には、相続人全員の同意や実印、印鑑証明書が必要となることがほとんどです。
お子さんのいないご夫婦の場合、万一の際には配偶者自身で、煩雑な書類収集や金融機関・法務局とのやり取りをすべて行うことが想定されます。そうなった時の負担は計り知れません。
遺言書があれば、遺言執行者を指定することで、これらの手続きをスムーズに進めることが可能です。
これにより、残されたパートナーは精神的・身体的な負担を軽減し、大切な人を亡くした悲しみと向き合う時間を持つことができるでしょう。


このように、遺言書は単に財産の分け方を決めるだけでなく、残されたパートナーへの「安心」と「思いやり」を形にするための、最も確実な方法なのです。


②任意後見で備える

お子さんのいないご夫婦にとって、老後の安心は重要です。どちらかの判断能力が低下した際、財産管理や介護・医療の決定が困難になる可能性があります。配偶者様がおられても、ご自身も高齢であれば大きな負担です。任意後見契約で信頼できる人に財産管理や生活サポートを事前に任せれば、お二人の意思を尊重した老後を確実に送れます。


任意後見契約がないまま、認知症になった場合

任意後見契約がない状態で認知症などで判断能力が不十分になると、様々な不都合が生じます。
まず、ご自身の財産を自由に管理・処分できなくなり、預貯金の引き出しや不動産の売却なども困難になります。
また、介護サービスや施設入所の契約も自分でできなくなり、生活に支障が出る可能性があります。
これらの手続きには家庭裁判所に法定後見人を選任してもらう必要がありますが、時間と費用がかかる上、誰が後見人になるか自分で決められないというデメリットがあります。


具体的な不都合の例

  • 預貯金が凍結され、生活費が引き出せなくなる。
  • 自宅の売却やリフォームができなくなる。
  • 希望する介護サービスや施設との契約ができない。
  • 家庭裁判所が選任した法定後見人が、必ずしも希望する人物とは限らない。
  • 一度法定後見が始まると、本人の判断能力が回復しない限り原則として取り消せない。


任意後見契約のメリットが現れる場面

1.配偶者に先立たれ、今後の支援体制に不安があるとき
2.家族と離れて暮らしていて、すぐに頼れないとき
3.銀行の手続きや契約ごとが煩わしく感じてきたとき
4.将来施設に入ることを想定し、その準備をしておきたいとき
5.身寄りが少なく、頼れる人が限られているとき
6.法定後見になりたくない(知らない人に任されるのが嫌)とき
7.「もしものとき」にどう動けばよいか不安があるとき


③死後事務委任で思いやりを

万が一の時に残された方が一人で膨大な死後事務を抱え込むことは大きな負担です。
葬儀や供養、医療費の精算、行政手続きなど、心身ともに辛い中でこれらを滞りなく進めるのは非常に困難でしょう。
死後事務委任契約を結んでおけば、信頼できる人にこれらの手続きを任せることができ、残されたパートナーの精神的・肉体的負担を軽減し、安心して見送ることができます。
お互いへの最後の思いやりとして、ぜひご検討ください。


死後事務委任契約がないまま、亡くなられた場合

以下のようなデメリットが考えられます。

デメリット 内容
葬儀や供養に関する希望が叶えられない可能性がある 亡くなった方の葬儀形式や埋葬方法、宗派などが不明な場合、残された配偶者は故人の意向を汲み取ることが難しくなります。
医療費や介護費用、入院費などの精算が困難になる 故人に未払い金がある場合、配偶者が誰にどう問い合わせて良いか分からず、手続きが滞る可能性があります。
賃貸物件の解約や身の回りの整理が滞る 故人が賃貸物件に住んでいた場合、速やかに解約し、遺品を整理する必要がありますが、精神的な負担から手がつけられず、余分な費用が発生することも。
役所への死亡届提出や各種保険・年金の手続きが遅れる 死亡後の公的な手続きは期限が定められているものも多く、失念すると、年金受給や保険金請求に影響が出る可能性があります。
友人・知人への連絡や、デジタル遺品の整理に困る 故人の交友関係や、SNSアカウント、オンラインサービスの解約など、誰に連絡すれば良いか、どう対応すれば良いか分惑し、適切な処理が難しくなります。

これらの事態は、残された配偶者の心身に大きなストレスを与え、回復を遅らせる原因にもなりかねません。


死後事務委任契約のメリットが現れる場面

  • 1.配偶者や子が高齢・病弱で手続きが難しい
  • 2.兄弟姉妹などが高齢で、実務ができない
  • 3.身寄りがなく、死後の手続きを頼める人がいない
  • 4.疎遠な親族に連絡や負担をかけたくない
  • 5.相続人が遠方に住んでおり、手続きが困難
  • 6.ペットを飼っていて、世話を頼みたい人がいる