お子さんのいないご夫婦

1|おふたりの「これから」を安心に変えるために

 長年連れ添ってこられたご夫婦にとって、これまで二人で築いてきた財産を、残されたパートナーが安心して受け継ぎ、穏やかに暮らせるかどうかは、何より気がかりなことではないでしょうか。「自分にもしものことがあったら、相手は手続きや財産管理で困らないだろうか」という思いは、お子さんのいないご夫婦に共通する心配ごとです。


 実は、何も準備をしていないと、配偶者だけでなく、亡くなった方の親や兄弟姉妹にも相続権が及びます。 その結果、残された配偶者が義理の親族と話し合いをしなければならなかったり、財産を自由に使えなくなったりすることがあります。さらに、判断能力が低下したときや、亡くなった後の手続きも、配偶者がたった一人で抱え込むことになりかねません。


 けれども、どうかご安心ください。事前にきちんと準備をしておけば、こうした不安はしっかり防げます。 このページでは、おふたりの安心を支える3つの備え――「遺言書作成」「任意後見契約」「死後事務委任契約」を、やさしくご紹介します。

2|遺言書作成で「配偶者にすべてを遺す」意思を確かにする

もし準備しなかった場合に起こること

 お子さんがいない場合、配偶者だけが相続人になるとは限りません。亡くなった方の親や兄弟姉妹も相続人となり、配偶者は遺産分割協議(相続人全員での話し合い)を行う必要が生じます。

  • 配偶者が、義理の親や兄弟姉妹と遺産の話し合いをしなければならない
  • 疎遠だったり意見がまとまらなかったりして、協議が難航する
  • 全員の同意がそろわず、預貯金が凍結されたままになる
  • 兄弟姉妹が亡くなっていると、その子(甥・姪)まで相続人に加わり、さらに複雑になる

遺言書でできること(概要)

 遺言書は、「すべての財産を配偶者に相続させる」とあなたの意思を明確に示せる、最も確実な方法です。これにより、義理の親族との話し合いを避け、残された配偶者の生活をしっかり守れます。公正証書遺言にしておけば無効になる心配もありません。(詳しくはこちら


遺言書が効果を発揮する具体的な場面

  1. 配偶者にすべての財産を確実に遺したいとき
  2. 義理の兄弟姉妹や甥・姪との話し合いを避けたいとき
  3. 自宅や預貯金を、配偶者が困らず受け継げるようにしたいとき
  4. 夫婦それぞれが、お互いに財産を遺し合いたいとき
  5. 遺言執行者を決めて、手続きをスムーズに進めたいとき

よくある質問

兄弟姉妹に遺留分はありますか?

いいえ。兄弟姉妹に遺留分(最低限の取り分)はありません。 そのため遺言で「全財産を配偶者へ」と書けば、兄弟姉妹は原則として何も請求できません。

親が存命の場合は?

親には遺留分(この場合法定相続分の1/3)があります。遺言で配偶者に全部を遺しても、親から請求される可能性がある点に注意が必要です。

自筆の遺言でも大丈夫?

有効ですが形式不備のリスクがあります。確実性を重視するなら公正証書遺言がおすすめです。

費用はどのくらい?

公正証書遺言は財産額に応じた公証人手数料(数万円〜)に、専門家のサポート費用が加わります。

書き直しはできますか?

いつでも可能です。新しい遺言が優先され、状況の変化に合わせて見直せます。

 遺言書は、「残されたあなたを困らせたくない」という、配偶者への何よりの思いやりです。

3|任意後見契約で「判断能力が低下したとき」に備える

もし準備しなかった場合に起こること

 病気や認知症などで判断能力が低下すると、自分で財産管理や契約ができなくなります。お子さんのいないご夫婦では、配偶者ご自身も高齢であることが多く、何も備えがないと大きな負担がのしかかります。

  • 預貯金が凍結され、配偶者でも生活費を引き出せなくなる
  • 自宅の売却やリフォーム、施設入所の契約ができない
  • 家庭裁判所が選ぶ法定後見人に財産管理が委ねられ、誰がなるか自分では選べない
  • いったん始まると、判断能力が回復しない限り原則やめられない

任意後見契約でできること(概要)

 任意後見契約は、「将来、判断能力が低下したら、信頼する人に財産管理や生活のサポートを任せる」と元気なうちに約束しておく契約です。配偶者や信頼できる第三者をあらかじめ指定でき、おふたりの意思を尊重した老後を実現できます。(詳しくはこちら)


任意後見契約が効果を発揮する具体的な場面

  1. 認知症などになっても、配偶者に財産を管理してほしいとき
  2. 知らない第三者に後見人を任されたくないとき
  3. 配偶者に先立たれた後の支援体制に不安があるとき
  4. 銀行や役所の手続きが負担に感じてきたとき
  5. 将来の施設入所に備えておきたいとき
  6. 身寄りが少なく、頼れる人が限られているとき

よくある質問

配偶者を後見人に指定できますか?

はい。配偶者はもちろん、信頼できる第三者(専門家など)も任意後見人に指定できます。

いつから効力が始まりますか?

判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点からです。それまでは効力は生じません。

契約に決まった形式は?

必ず公正証書で作成する必要があります。これは法律上の要件です。

配偶者も高齢で不安です。

配偶者と専門家を組み合わせて指定したり、専門家を後見人にしたりすることも可能です。状況に応じて設計できます。

費用はどのくらい?

公正証書作成費用に専門家報酬、開始後は監督人への報酬(月額数千円〜)がかかります。

 任意後見は、「弱ったときも、おたがいを支え合いたい」という願いを制度として叶えるしくみです。

4|死後事務委任契約で「最後の手続き」の負担をなくす

もし準備しなかった場合に起こること

 亡くなった後には、葬儀や行政手続き、医療費の精算など、数多くの事務が待っています。残された配偶者がこれらを一人で、しかも深い悲しみの中で進めるのは、計り知れない負担です。

デメリット 内容

葬儀や供養の希望が伝わらない

葬儀の形式や納骨の方法が不明なまま、配偶者が一人で判断を迫られる。

医療費・入院費の精算に困る

未払い金の問い合わせ先や手続きがわからず、滞ってしまう。

各種手続きが期限に間に合わない

死亡届や年金・保険の手続きは期限があり、失念すると不利益が生じる。

デジタル遺品の整理に困る

SNSやサブスクの解約など、何をどうすればよいかわからず放置される。


死後事務委任契約でできること(概要)

 死後事務委任契約は、葬儀・納骨・行政手続き・医療費精算・遺品整理などを、信頼する人に正式に任せておく契約です。残された配偶者が膨大な事務を一人で抱え込まずに済み、心穏やかに大切な人を見送れます。(詳しくはこちら


死後事務委任契約が効果を発揮する具体的な場面

  1. 残された配偶者が高齢・病弱で、手続きが難しいとき
  2. 自分の葬儀や納骨の希望を確実に叶えたいとき
  3. 疎遠な親族に連絡や負担をかけたくないとき
  4. 医療費の精算や役所手続きを任せたいとき
  5. SNSなどデジタル遺品の整理も頼んでおきたいとき


よくある質問

遺言書とは何が違う?

遺言は「財産の行き先」、死後事務委任は「葬儀や手続きなどの実務」を定めるもの。両方そろえることで安心が完成します。

配偶者に任せられますか?

はい。配偶者はもちろん、配偶者の負担を考えて専門家を受任者に指定することもできます。

費用の支払いはどうする?

あらかじめ預託金を預けたり、遺言で費用相当額を遺贈したりして手当てしておくのが一般的です。

どこまで頼めますか?

葬儀・納骨・医療費精算・役所手続き・解約・遺品整理など、幅広く委任できます。

契約の形式は?

公正証書での作成が一般的で、第三者にも効力を示しやすく安心です。

 死後事務委任は、「最後まで、あなたを楽にしてあげたい」という、おたがいへの最後の思いやりです。

5|どれが自分に必要か、迷ったときは

 ここまでご紹介した3つの備えは、それぞれが人生の異なる場面を支え、組み合わさることで真価を発揮します。 「遺言書」で財産を確実に配偶者へ遺し、「任意後見」で判断能力が低下したときの暮らしを守り、「死後事務委任」で最後の手続きの負担をなくす――この流れがそろって初めて、お子さんのいないご夫婦の「これから」が、切れ目なく守られます。


 とはいえ、「うちには何から必要なのだろう」と迷われるのは当然のことです。おふたりの財産やご親族との関係、お住まいの状況によって、最適な組み合わせは変わります。


 どうか不安をおふたりだけで抱え込まないでください。私たちは、ご夫婦お一人おひとりの想いを丁寧にうかがい、最も安心できるかたちをご一緒に考えます。 まずはお気軽にご相談ください。おふたりで歩んでこられた人生の「これから」を、心を込めて支えるお手伝いをいたします。