ご家族を介護されている方

1|「親なき後」も、わが子が安心して暮らせるように

 障害のあるお子さんを、これまで愛情を注いで支えてこられたあなた。日々の介護に向き合いながら、心の奥でいちばん気がかりなのは、「自分がいなくなった後、この子はどうなるのだろう」という思いではないでしょうか。これは「親なき後問題」と呼ばれ、多くのご家族が直面する、切実で重い課題です。


 お子さんが自分で財産を管理することが難しい場合、親御さんが遺した財産をどう守り、どう使っていくのか。誰がお子さんの生活を支え、必要な契約を結ぶのか。何も準備をしていないと、せっかく遺した財産が適切に使われなかったり、お子さんが手続きで困ったりすることになりかねません。


 けれども、どうかご安心ください。今のうちから正しいしくみを整えておけば、あなたがいなくなった後も、わが子の暮らしと財産をしっかり守ることができます。 このページでは、「親なき後」の安心を支える3つの備え――「家族信託」「遺言書作成」「任意後見契約」を、やさしくご紹介します。

2|家族信託で「遺した財産をわが子のために使い続ける」しくみをつくる

もし準備しなかった場合に起こること

 お子さんに財産をそのまま相続させても、お子さん自身に財産を管理する力が十分でない場合、その財産を適切に使えないことがあります。預貯金の引き出しや契約には判断能力が求められるためです。

  • お子さんが相続した財産を、自分では管理・運用できない
  • 預貯金が事実上動かせず、生活費や医療費に充てられない
  • 親族や第三者に財産を不当に使われてしまうおそれがある
  • お子さんが亡くなった後、財産が望まない相手に渡ってしまう

この業務でできること(概要)

 家族信託は、信頼できる親族や支援者(受託者=財産を預かり管理する人)に財産を託し、お子さん(受益者)のために使ってもらうしくみです。「親が元気なうちは親が、亡くなった後は信頼する人が」と管理者をつなぎ、さらにお子さんが亡くなった後の財産の行き先まで指定できます。(詳しくはこちら


この業務が効果を発揮する具体的な場面

  1. 遺した財産を、お子さんのために計画的に使ってほしいとき
  2. お子さん自身では財産管理が難しいとき
  3. きょうだいや親族に、財産の管理を託したいとき
  4. お子さんの死後、財産を特定の人や団体に遺したいとき
  5. 財産が不当に使われるのを防ぎたいとき

よくある質問

誰に財産を託せばいい?

信頼できる兄弟姉妹や親族受託者にするのが一般的です。適任者がいない場合は、支援する法人などを活用する方法もあります。

お子さんの死後の行き先も決められる?

はい。受益者連続型信託を使えば、「お子さんの次は○○へ」と承継先まで指定できます。遺言ではできない家族信託の強みです。

受託者が財産を私的に使わない?

信託の目的を契約で定め、受託者はそれに沿って管理する義務を負います。信託監督人を置いて見張る役を加えると、より安心です。

障害年金や手当に影響しますか?

信託の設計によります。受給に影響しないよう配慮した設計が可能ですので、専門家にご相談ください。

費用はどのくらい?

信託契約書を公正証書で作る費用、不動産があれば登記費用、専門家報酬がかかります。財産規模により変動します。

 家族信託は、「自分がいなくなっても、わが子のために財産を使い続ける」という、親心を形にするしくみです。

3|遺言書作成で「わが子に確実に財産を遺す」意思を示す

もし準備しなかった場合に起こること

 遺言書がないと、財産は相続人全員の話し合い(遺産分割協議で分けることになります。障害のあるお子さんが相続人に含まれる場合、お子さん自身が協議に参加して意思表示することが難しく、手続きが進まなくなります。

  • お子さんが遺産分割協議に参加できず、手続きが止まる
  • お子さんのために成年後見人(判断能力を補う代理人)を立てる必要が生じる
  • 兄弟姉妹間で、誰がどれだけ負担し相続するかで対立する
  • お子さんに必要な財産を、確実に遺せない

この業務でできること(概要)

 遺言書は、「お子さんに、生活を支えるための財産を確実に遺す」とあなたの意思を明確に示せる方法です。お子さんを支えてくれるきょうだいへの配慮も同時に設計でき、家族全体の納得につながります。公正証書遺言にすれば確実です。(詳しくはこちら


この業務が効果を発揮する具体的な場面

  1. お子さんに、生活資金となる財産を確実に遺したいとき
  2. お子さんを支える兄弟姉妹にも配慮した配分をしたいとき
  3. 遺産分割協議の負担をなくしたいとき
  4. お子さんを支えてくれる人に、感謝の財産を遺したいとき
  5. 遺言執行者を決め、手続きを確実に進めたいとき

よくある質問

障害のある子に多めに遺せますか?

はい。遺言で配分を指定できます。ただし他の相続人の遺留分(原則 法定相続分の1/2)に配慮した設計が安心です。

「負担付遺贈」とは?

「財産を多めに渡す代わりに、お子さんの世話をしてほしい」と条件をつけて遺す方法です。兄弟姉妹への承継で活用できます。

家族信託とどう使い分ける?

遺言は「財産を誰に渡すか」、家族信託は「渡した財産をどう管理・活用するか」。両者を組み合わせることで万全になります。

自筆の遺言でも大丈夫?

有効ですが形式不備のリスクがあります。確実性を重視するなら公正証書遺言がおすすめです。

費用はどのくらい?

公正証書遺言は財産額に応じた公証人手数料(数万円〜)に専門家のサポート費用が加わります。

 遺言書は、「この子の暮らしを、最後まで守りたい」という親の願いを、確かなかたちにするものです。

4|任意後見契約で「親自身が支えられなくなったとき」に備える

もし準備しなかった場合に起こること

 「親なき後」の前に、「親が元気でなくなった後」という段階があります。親御さん自身が高齢や認知症で判断能力を失うと、お子さんの世話や財産管理を続けられなくなります。何も備えがないと、家庭裁判所が選ぶ法定後見人に委ねられます。

  • 親が認知症になると、お子さんの世話や契約を続けられなくなる
  • 親子ともに後見が必要になり、対応が複雑になる
  • 誰が後見人になるか選べず、家庭の事情を知らない人が選任される
  • お子さんの支援に空白が生じてしまう

この業務でできること(概要)

 任意後見契約は、「親自身の判断能力が低下したら、信頼する人に財産管理や生活のサポートを任せる」と元気なうちに約束しておく契約です。お子さんを支えてくれるきょうだいや専門家を指定でき、親子双方の支援に空白をつくりません。(詳しくはこちら


この業務が効果を発揮する具体的な場面

  1. 親自身が認知症になっても、支援体制を保ちたいとき
  2. お子さんを支える兄弟姉妹に、親のことも任せたいとき
  3. 知らない第三者に後見人を任されたくないとき
  4. 家族信託でカバーしきれない生活面も備えたいとき
  5. 親子ともに、切れ目のない支援を整えたいとき

よくある質問

親と子、両方に必要ですか?

状況によります。まず親御さんの備えを整え、お子さんには家族信託成年後見を組み合わせるのが一般的です。

いつから効力が始まりますか?

判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点からです。

契約に決まった形式は?

必ず公正証書で作成する必要があります。法律上の要件です。

きょうだいを後見人にできますか?

はい。お子さんを支える兄弟姉妹や、信頼できる専門家を指定できます。

費用はどのくらい?

公正証書作成費用に専門家報酬、開始後は監督人への報酬(月額数千円〜)がかかります。

 任意後見は、「自分が支えられなくなっても、わが子への支援を絶やさない」ための備えです。

5|どれが自分に必要か、迷ったときは

 ここまでご紹介した3つの備えは、親が元気な今から、親なき後まで、支援を切れ目なくつなぎ、組み合わさることで真価を発揮します。 「遺言書」でわが子に確実に財産を遺し、「家族信託」でその財産をわが子のために管理・活用し続け、「任意後見」で親自身が支えられなくなったときにも備える――この流れがそろって初めて、「親なき後」の不安に、しっかりと向き合うことができます。


 とはいえ、「うちの場合は何から始めればいいのだろう」と迷われるのは当然のことです。お子さんの障害の状況や、支えてくれるご家族の有無、財産の内容によって、最適な組み合わせは一人ひとり異なります。


 どうか、この重い思いをお一人で抱え込まないでください。私たちは、お子さんの福祉に関わる専門機関とも連携しながら、あなたとお子さんにとって最も安心できるかたちをご一緒に考えます。 まずはお気軽にご相談ください。あなたの何よりの願い――「この子が、これからも安心して暮らせること」を、力を尽くして支えるお手伝いをいたします。