シニア世代の方

1|これからの人生を、安心して楽しむために

 これまで懸命に歩んでこられた人生。これからは穏やかに、ご自分らしく過ごしたいとお考えのことと思います。その一方で、ふとした折に「もし認知症になったら、財産はどうなるのだろう」「自分の死後、家族が遺産で揉めないだろうか」といった不安が頭をよぎることはないでしょうか。


 近年は、こうした従来の心配ごとに加えて、ネット銀行やスマホの中の「デジタル資産という新しい課題も生まれています。パスワードが分からず、家族が口座やデータにアクセスできない、という事例が増えているのです。


 けれども、どうかご安心ください。これらの不安は、元気な今のうちに正しく準備しておくことで、しっかりと防げます。 大切なのは、判断能力があるうちに、ご自分の意思をかたちにしておくことです。このページでは、シニア世代の安心を支える4つの備え――「家族信託」「任意後見契約」「遺言書作成」「死後事務委任契約」を、やさしくご紹介します。

2|家族信託で「認知症による財産凍結」を防ぐ

もし準備しなかった場合に起こること

 認知症などで判断能力が低下すると、本人の財産は法律上「凍結」された状態になります。これは、本人を守るためのしくみですが、家族にとっては大きな不便を生みます。

  • 預貯金を引き出せず、本人の医療費や介護費も家族が立て替えるしかない
  • 自宅を売って施設費用に充てたくても、本人名義の不動産は売却できない
  • 賃貸物件の契約更新や修繕といった管理ができなくなる
  • 家庭裁判所での法定後見手続きが必要になり、時間も費用もかかる

家族信託でできること(概要)

 家族信託は、信頼できる家族(受託者=財産を預かり管理する人)に、財産の管理や処分をあらかじめ託しておくしくみです。元気なうちに契約しておけば、その後認知症になっても、財産が凍結されることなく、家族があなたのために管理を続けられます。(詳しくはこちら


家族信託が効果を発揮する具体的な場面

  1. 認知症になっても、自宅や預貯金を家族に管理してほしいとき
  2. 将来、自宅を売って施設費用に充てる可能性があるとき
  3. 賃貸物件など、継続的な管理が必要な財産があるとき
  4. 法定後見の手続きや制約を避けたいとき
  5. 財産の承継先を、二段階先まで決めておきたいとき

よくある質問

認知症になってからでも契約できますか?

いいえ。契約時に判断能力があることが必要です。だからこそ、元気な今のうちに準備することが大切です。

誰に財産を託すのですか?

信頼できる家族を受託者(財産を管理・処分する人)に選びます。お子さんなどを指定するのが一般的です。

任意後見とどう違う?

家族信託財産の管理・運用・承継が中心。身上監護(介護や医療の手配)は任意後見が担うため、両者を併用すると万全です。

費用はどのくらい?

信託契約書を公正証書で作る費用、不動産があれば登記費用、専門家のコンサル報酬がかかります。財産額により変動します。

家族に財産を勝手に使われない?

信託の目的を契約で定め、受託者はその目的に沿って管理する義務を負います。第三者の監督役を置くことも可能です。

 家族信託は、「認知症になっても、自分の財産を自分の望みどおりに使い続ける」ための、確かな備えです。

3|任意後見契約で「契約や生活のサポート」に備える

もし準備しなかった場合に起こること

 判断能力が低下すると、財産管理だけでなく、介護サービスや施設入所の契約といった生活面の手続きも、自分ではできなくなります。何も備えがないと、家庭裁判所が選ぶ法定後見人にすべてが委ねられます。

  • 介護サービスや施設入所の契約が自分でできなくなる
  • 誰が後見人になるか自分で選べず、見ず知らずの人が選任される
  • 家族が後見人を希望しても、選ばれない場合がある
  • いったん始まると、回復しない限り原則やめられない

任意後見契約でできること(概要)

 任意後見契約は、「将来、判断能力が低下したら、信頼する人に財産管理や生活のサポートを任せる」と元気なうちに約束しておく契約です。家族や信頼できる専門家をあらかじめ自分で選べるので、希望に沿った支援を受けられます。(詳しくはこちら


任意後見契約が効果を発揮する具体的な場面

  1. 認知症などになっても、信頼する家族に支えてほしいとき
  2. 介護や施設入所の手続きを任せたいとき
  3. 知らない第三者に後見人任されたくないとき
  4. 家族信託でカバーしきれない生活面も備えたいとき
  5. 将来の暮らしを、自分の意思で決めておきたいとき

よくある質問

家族信託があれば任意後見は不要?

いいえ。家族信託は財産管理、任意後見は介護・医療など生活面の手続き(身上監護)が得意です。役割が異なるため併用が理想です。

いつから効力が始まりますか?

判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点からです。それまでは効力は生じません。

契約に決まった形式は?

必ず公正証書で作成する必要があります。これは法律上の要件です。

誰を後見人にできますか?

家族はもちろん、信頼できる専門家(行政書士など)も指定できます。

費用はどのくらい?

公正証書作成費用に専門家報酬、開始後は監督人への報酬(月額数千円〜)がかかります。

 任意後見は、「弱ったときも、信頼できる人に支えてもらう」という、未来の自分への安心です。

4|遺言書作成で「争族」を防ぐ

もし準備しなかった場合に起こること

 「うちは仲が良いから大丈夫」と思っていても、いざ相続が始まると、お金が絡んで家族の関係がこじれてしまうことは少なくありません。遺言書がないと、誰が何を相続するかは相続人全員の話し合い(遺産分割協議で決めなければなりません。

  • 相続人全員の同意が得られず、話し合いがまとまらない
  • 全員の署名・実印がそろわず、預貯金が凍結されたままになる
  • 自宅などの分けにくい財産をめぐって対立する
  • 話し合いが長引き、家庭裁判所での調停に発展する

遺言書でできること(概要)

 遺言書は、「誰に・何を遺すか」をあなた自身の意思で明確に決められる争族を防ぐ最も確実な方法です。配分をはっきり示すことで、残された家族が話し合いで悩まず、対立せずに済みます。公正証書遺言にすれば無効の心配もありません。(詳しくはこちら


遺言書が効果を発揮する具体的な場面

  1. 相続で家族に争ってほしくないとき
  2. 自宅など、分けにくい財産があるとき
  3. 特定の家族に多めに(または少なめに)遺したいとき
  4. お世話になった人や団体に遺贈・寄付したいとき
  5. 遺言執行者を決め、手続きをスムーズに進めたいとき

よくある質問

遺留分とは何ですか?

配偶者や子などに保障された最低限の取り分で、原則法定相続分の1/2です。これを侵すと後から請求される可能性があるため、配慮して作成します。

自筆の遺言でも大丈夫?

有効ですが形式不備のリスクがあります。確実性を重視するなら公正証書遺言がおすすめです。

デジタル資産も遺言に書ける?

はい。ネット口座や暗号資産なども記載でき、財産目録にまとめておくと家族が把握しやすくなります。

費用はどのくらい?

公正証書遺言は財産額に応じた公証人手数料(数万円〜)に専門家のサポート費用が加わります。

書き直しはできますか?

いつでも可能です。新しい遺言が優先され、状況の変化に合わせて見直せます。

 遺言書は、「家族にいつまでも仲良くいてほしい」という願いを、確かなかたちにする思いやりです。

5|死後事務委任契約で「デジタル資産と最後の手続き」に備える

もし準備しなかった場合に起こること

 亡くなった後には、葬儀や行政手続きに加え、近年はデジタル資産の整理という新たな課題が生じます。パスワードや契約内容が分からないと、家族が手も足も出せません。

デメリット 内容
ネット口座や暗号資産が見つからない  IDやパスワードが不明で、家族が資産の存在に気づけず放置される。
サブスクの料金が払われ続ける  動画配信や有料アプリの解約がされず、引き落としが続く。
SNSアカウントが残り続ける  故人のアカウントが放置され、悪用や心理的負担の原因になる。
葬儀や行政手続きの希望が伝わらない  葬儀の形式や各種手続きの意向がわからず、家族が判断に迷う。


死後事務委任契約でできること(概要)

 死後事務委任契約は、葬儀・行政手続きに加え、デジタル資産の整理やアカウントの解約などを、信頼する人に正式に任せておく契約です。あらかじめ情報を整理し委任しておくことで、家族の手間と混乱を大きく減らせます。(詳しくはこちら


死後事務委任契約が効果を発揮する具体的な場面

  1. ネット銀行や暗号資産など、デジタル資産を持っているとき
  2. SNSや有料サービスの解約を確実にしてほしいとき
  3. 自分の葬儀や納骨の希望を叶えたいとき
  4. 残された家族の手続き負担を減らしたいとき
  5. 役所への各種手続きを任せたいとき

よくある質問

デジタル資産はどう備えればいい?

IDやパスワード、口座の一覧をエンディングノートなどに整理し、死後事務委任で整理を委任しておくと安心です。

遺言書とは何が違う?

遺言は「財産の行き先」、死後事務委任は「葬儀や手続きなどの実務」を定めるもの。両方そろえることで安心が完成します。

暗号資産も相続できますか?

はい、相続財産になります。ただしアクセス情報がないと事実上引き出せないため、生前の整理が不可欠です。

費用の支払いはどうする?

あらかじめ預託金を預けたり、遺言で費用相当額を遺贈したりして手当てしておくのが一般的です。

契約の形式は?

公正証書での作成が一般的で、第三者にも効力を示しやすく安心です。

 死後事務委任は、「目に見えない資産まで含めて、家族に迷惑をかけない」という、現代ならではの思いやりです。

6|どれが自分に必要か、迷ったときは

 ここまでご紹介した4つの備えは、それぞれが異なる不安に応え、組み合わさることで真価を発揮します。 「家族信託」で認知症による財産凍結を防ぎ、「任意後見」で介護や生活面を支え、「遺言書」で争族を防ぎ、「死後事務委任」でデジタル資産を含む最後の手続きに備える――この組み合わせがそろって初めて、シニア世代が直面しやすい不安に、もれなく備えることができます。


 とはいえ、「自分には何から始めればいいのだろう」と迷われるのは当然のことです。ご家族の状況や財産の内容、お持ちのデジタル資産によって、最適な組み合わせは一人ひとり異なります。


 どうか不安を、おひとりで抱え込まないでください。私たちは、あなたの想いとこれからの暮らしを丁寧にうかがい、最も安心できるかたちをご一緒に考えます。 まずはお気軽にご相談ください。これからの人生を心から楽しんでいただけるよう、しっかりと支えるお手伝いをいたします。