これまで懸命に歩んでこられた人生。これからは穏やかに、ご自分らしく過ごしたいとお考えのことと思います。その一方で、ふとした折に「もし認知症になったら、財産はどうなるのだろう」「自分の死後、家族が遺産で揉めないだろうか」といった不安が頭をよぎることはないでしょうか。
近年は、こうした従来の心配ごとに加えて、ネット銀行やスマホの中の「デジタル資産」という新しい課題も生まれています。パスワードが分からず、家族が口座やデータにアクセスできない、という事例が増えているのです。
けれども、どうかご安心ください。これらの不安は、元気な今のうちに正しく準備しておくことで、しっかりと防げます。 大切なのは、判断能力があるうちに、ご自分の意思をかたちにしておくことです。このページでは、シニア世代の安心を支える4つの備え――「家族信託」「任意後見契約」「遺言書作成」「死後事務委任契約」を、やさしくご紹介します。
認知症などで判断能力が低下すると、本人の財産は法律上「凍結」された状態になります。これは、本人を守るためのしくみですが、家族にとっては大きな不便を生みます。
家族信託は、信頼できる家族(受託者=財産を預かり管理する人)に、財産の管理や処分をあらかじめ託しておくしくみです。元気なうちに契約しておけば、その後認知症になっても、財産が凍結されることなく、家族があなたのために管理を続けられます。(詳しくはこちら)
いいえ。契約時に判断能力があることが必要です。だからこそ、元気な今のうちに準備することが大切です。
信頼できる家族を受託者(財産を管理・処分する人)に選びます。お子さんなどを指定するのが一般的です。
家族信託は財産の管理・運用・承継が中心。身上監護(介護や医療の手配)は任意後見が担うため、両者を併用すると万全です。
信託契約書を公正証書で作る費用、不動産があれば登記費用、専門家のコンサル報酬がかかります。財産額により変動します。
信託の目的を契約で定め、受託者はその目的に沿って管理する義務を負います。第三者の監督役を置くことも可能です。
家族信託は、「認知症になっても、自分の財産を自分の望みどおりに使い続ける」ための、確かな備えです。
判断能力が低下すると、財産管理だけでなく、介護サービスや施設入所の契約といった生活面の手続きも、自分ではできなくなります。何も備えがないと、家庭裁判所が選ぶ法定後見人にすべてが委ねられます。
任意後見契約は、「将来、判断能力が低下したら、信頼する人に財産管理や生活のサポートを任せる」と元気なうちに約束しておく契約です。家族や信頼できる専門家をあらかじめ自分で選べるので、希望に沿った支援を受けられます。(詳しくはこちら)
いいえ。家族信託は財産管理、任意後見は介護・医療など生活面の手続き(身上監護)が得意です。役割が異なるため併用が理想です。
判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点からです。それまでは効力は生じません。
必ず公正証書で作成する必要があります。これは法律上の要件です。
家族はもちろん、信頼できる専門家(行政書士など)も指定できます。
公正証書作成費用に専門家報酬、開始後は監督人への報酬(月額数千円〜)がかかります。
任意後見は、「弱ったときも、信頼できる人に支えてもらう」という、未来の自分への安心です。
「うちは仲が良いから大丈夫」と思っていても、いざ相続が始まると、お金が絡んで家族の関係がこじれてしまうことは少なくありません。遺言書がないと、誰が何を相続するかは相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めなければなりません。
遺言書は、「誰に・何を遺すか」をあなた自身の意思で明確に決められる、争族を防ぐ最も確実な方法です。配分をはっきり示すことで、残された家族が話し合いで悩まず、対立せずに済みます。公正証書遺言にすれば無効の心配もありません。(詳しくはこちら)
配偶者や子などに保障された最低限の取り分で、原則法定相続分の1/2です。これを侵すと後から請求される可能性があるため、配慮して作成します。
有効ですが形式不備のリスクがあります。確実性を重視するなら公正証書遺言がおすすめです。
はい。ネット口座や暗号資産なども記載でき、財産目録にまとめておくと家族が把握しやすくなります。
公正証書遺言は財産額に応じた公証人手数料(数万円〜)に専門家のサポート費用が加わります。
いつでも可能です。新しい遺言が優先され、状況の変化に合わせて見直せます。
遺言書は、「家族にいつまでも仲良くいてほしい」という願いを、確かなかたちにする思いやりです。
亡くなった後には、葬儀や行政手続きに加え、近年はデジタル資産の整理という新たな課題が生じます。パスワードや契約内容が分からないと、家族が手も足も出せません。
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| ネット口座や暗号資産が見つからない | IDやパスワードが不明で、家族が資産の存在に気づけず放置される。 |
| サブスクの料金が払われ続ける | 動画配信や有料アプリの解約がされず、引き落としが続く。 |
| SNSアカウントが残り続ける | 故人のアカウントが放置され、悪用や心理的負担の原因になる。 |
| 葬儀や行政手続きの希望が伝わらない | 葬儀の形式や各種手続きの意向がわからず、家族が判断に迷う。 |
死後事務委任契約は、葬儀・行政手続きに加え、デジタル資産の整理やアカウントの解約などを、信頼する人に正式に任せておく契約です。あらかじめ情報を整理し委任しておくことで、家族の手間と混乱を大きく減らせます。(詳しくはこちら)
IDやパスワード、口座の一覧をエンディングノートなどに整理し、死後事務委任で整理を委任しておくと安心です。
遺言は「財産の行き先」、死後事務委任は「葬儀や手続きなどの実務」を定めるもの。両方そろえることで安心が完成します。
はい、相続財産になります。ただしアクセス情報がないと事実上引き出せないため、生前の整理が不可欠です。
あらかじめ預託金を預けたり、遺言で費用相当額を遺贈したりして手当てしておくのが一般的です。
公正証書での作成が一般的で、第三者にも効力を示しやすく安心です。
死後事務委任は、「目に見えない資産まで含めて、家族に迷惑をかけない」という、現代ならではの思いやりです。
ここまでご紹介した4つの備えは、それぞれが異なる不安に応え、組み合わさることで真価を発揮します。 「家族信託」で認知症による財産凍結を防ぎ、「任意後見」で介護や生活面を支え、「遺言書」で争族を防ぎ、「死後事務委任」でデジタル資産を含む最後の手続きに備える――この組み合わせがそろって初めて、シニア世代が直面しやすい不安に、もれなく備えることができます。
とはいえ、「自分には何から始めればいいのだろう」と迷われるのは当然のことです。ご家族の状況や財産の内容、お持ちのデジタル資産によって、最適な組み合わせは一人ひとり異なります。
どうか不安を、おひとりで抱え込まないでください。私たちは、あなたの想いとこれからの暮らしを丁寧にうかがい、最も安心できるかたちをご一緒に考えます。 まずはお気軽にご相談ください。これからの人生を心から楽しんでいただけるよう、しっかりと支えるお手伝いをいたします。