LGBTQのパートナーがいる方

1|大切なパートナーと歩む、これからの安心のために

 長年連れ添ったパートナーがいても、現在の日本では同性どうしの婚姻が認められていません。だからこそ、「もし自分に何かあったとき、残されたパートナーは大丈夫だろうか」という不安を抱えていらっしゃる方は、とても多いのではないでしょうか。


 法律上の家族(配偶者や血縁者)でなければ、相続や手続きの場面でパートナーは「他人」として扱われてしまうのが実情です。どれほど深い関係を築いてきても、何も準備をしていなければ、財産は遺せず、入院時の対応や亡くなった後の手続きにも関われない、という現実が立ちはだかります。


 けれども、どうか不安を抱えたままにしないでください。法的な準備をきちんと整えておけば、お二人の意思を確かなかたちにして、大切なパートナーを守ることができます。 このページでは、お二人の安心を支える4つの備え――「遺言書作成」「任意後見契約」「死後事務委任契約」「財産管理委任契約」を、やさしくご紹介します。

2|遺言書作成で「財産を遺す意思」を確かにする

もし準備しなかった場合に起こること

 法律上の婚姻関係にないパートナーには、相続権が一切ありません遺言書がないまま亡くなると、二人で築いた財産も、住んでいた家も、法律上は故人の親や兄弟姉妹といった血縁者のものになってしまいます。


 その結果、残されたパートナーには次のような事態が起こりえます。

  • 一緒に暮らしてきた家を出ていかなければならなくなる
  • 二人の預貯金を一切受け取れない
  • 故人の親族と顔を合わせ、つらい交渉を強いられる
  • 相続人がいない場合でも、財産は最終的に国庫(国のもの)に帰属してしまう

遺言書でできること(概要)

 遺言書は、法定相続人ではないパートナーに財産を遺せる、最も確実な方法です。「すべての財産を○○に遺贈する」と明確に記すことで、お二人で築いたものをきちんとパートナーへ引き継げます。公正証書遺言にしておけば、形式の不備で無効になる心配もなく、安心です。(詳しくはこちら


遺言書が効果を発揮する具体的な場面

  1. パートナーに住まいや預貯金を確実に遺したいとき
  2. 自分の親や兄弟姉妹と、パートナーが争うことを避けたいとき
  3. お互いに財産を遺し合いたいとき
  4. 親族にパートナーの存在を知られたくない・関わらせたくないとき
  5. 遺言執行者を決めて、手続きをスムーズに進めたいとき

よくある質問

パートナーに全財産を遺すと書けますか?

はい、可能です。ただし親や子がいる場合は、最低限の取り分である遺留分(法定相続分の原則1/2)が認められており、後から請求される可能性があります。兄弟姉妹に遺留分はありません。

自筆の遺言でも大丈夫?

有効ですが、形式不備で無効になるリスクがあります。確実性を重視するなら公正証書遺言(公証人が作成)をおすすめします。

費用はどのくらい?

公正証書遺言は、財産額に応じた公証人手数料(数万円〜)に加え、専門家の作成サポート費用がかかります。詳細は個別にお見積りします。

遺贈すると税金は?

法定相続人以外への遺贈は、相続税が2割加算される点に注意が必要です。

一度書いたら変更できない?

いつでも書き直せます。新しい遺言が優先され、関係や状況の変化に合わせて見直せます。

 遺言書は、お二人の歴史と想いを「法的なかたち」にして残す、何よりの愛情表現です。

3|任意後見契約で「判断能力が低下したとき」に備える

もし準備しなかった場合に起こること

 病気や認知症などで判断能力が低下したとき、何も準備がなければ、家庭裁判所が選ぶ法定後見人に財産管理が委ねられます。このときパートナーが後見人に選ばれる保証はなく、見ず知らずの専門家が選任されることも少なくありません。

  • パートナーが財産管理や医療・介護の判断に関われなくなる
  • 預貯金が凍結され、生活費の引き出しもパートナーにはできない
  • 誰が後見人になるか自分では選べない
  • いったん始まると、回復しない限り原則やめられない

任意後見契約でできること(概要)

 任意後見契約は、「将来、判断能力が低下したら、信頼するパートナーに財産管理や生活のサポートを任せる」とあらかじめ約束しておく契約です。元気なうちに公正証書で結んでおくことで、いざというときパートナーが正式にあなたを支えられます。(詳しくはこちら


任意後見契約が効果を発揮する具体的な場面

  1. 認知症などになっても、パートナーに財産を管理してほしいとき
  2. 知らない第三者に後見人を任されたくないとき
  3. 医療や介護の方針を、パートナーに決めてもらいたいとき
  4. 親族とパートナーの間で揉めごとを起こしたくないとき
  5. 高齢になっても、お互いを支え合う体制を整えておきたいとき

よくある質問

パートナーを後見人に指定できますか?

はい。血縁関係がなくても、信頼できる人を自由に後見人(任意後見人)に指定できます。

いつから効力が始まりますか?

判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点からです。それまでは効力は生じません。

契約に決まった形式は?

必ず公正証書で作成する必要があります。これは法律上の要件です。

後見人を監督する人はいる?

はい。任意後見監督人が後見人の仕事をチェックするため、財産が適切に守られます。

費用はどのくらい?

公正証書作成費用(基本料金11,000円など)に加え、専門家報酬、開始後は監督人への報酬(月額数千円〜)がかかります。

 任意後見は、「弱ったときも、あなたのそばにいたい」という願いを制度として支えるしくみです。

4|死後事務委任契約で「最後の見送り」を託す

もし準備しなかった場合に起こること

 亡くなった後の葬儀や行政手続きは、原則として親族が行うものとされています。法律上の家族でないパートナーは、喪主になれなかったり、各種手続きを断られたりすることがあります。

  • 葬儀の形式やお墓について、パートナーの希望が通らない
  • 病院や役所での手続きを「家族でない」と拒まれる
  • 賃貸住宅の解約や遺品整理が進められない
  • 故人が望んだ見送りができず、パートナーが深く傷つく

死後事務委任契約でできること(概要)

 死後事務委任契約は、葬儀・納骨・行政手続き・遺品整理などを、信頼するパートナーに正式に任せておく契約です。「あなたに見送ってほしい」という意思を法的に裏づけることで、パートナーが堂々と手続きを進められます。(詳しくはこちら


死後事務委任契約が効果を発揮する具体的な場面

  1. 自分の葬儀や納骨を、パートナーに執り行ってほしいとき
  2. パートナーが「家族でない」と手続きを断られるのを防ぎたいとき
  3. 賃貸住宅の解約や遺品整理を任せたいとき
  4. 親族に負担や干渉をさせたくないとき
  5. SNSなどデジタル遺品の整理も頼んでおきたいとき

よくある質問

パートナーに葬儀を任せられますか?

はい。契約で受任者に指定すれば、喪主としての役割を含め死後の事務を委ねられます。

遺言書と何が違う?

遺言は「財産の行き先」、死後事務委任は「葬儀や手続きなどの実務」を定めるもの。両方そろえることで安心が完成します。

費用の支払いはどうする?

あらかじめ預託金を預けたり、遺言で費用相当額を遺贈したりして手当てしておくのが一般的です。

どこまで頼めますか?

葬儀・納骨・医療費精算・役所手続き・解約手続き・遺品整理など、幅広く委任できます

契約の形式は?

公正証書での作成が一般的で、第三者にも効力を示しやすく安心です。

 死後事務委任は、「最後まであなたに寄り添ってほしい」という想いを、確かなかたちにする備えです。

5|財産管理委任契約で「今このとき」の不安に応える

もし準備しなかった場合に起こること

 判断能力はあっても、入院やケガ、加齢などで体が思うように動かなくなることがあります。そんなとき、銀行の手続きや支払いを頼みたくても、パートナーは「家族でない」として金融機関で対応を断られがちです。

  • 入院中に、パートナーが代わりに預金を引き出せない
  • 各種支払いや契約手続きが滞ってしまう
  • 任意後見が始まる前の「空白期間」を支えられない

財産管理委任契約でできること(概要)

 財産管理委任契約は、判断能力はあるけれど体が不自由なときに、財産管理や日常の事務をパートナーに任せられる契約です。任意後見が始まる前の段階から使え、任意後見契約とセットで結ぶことで切れ目のないサポートが実現します。(詳しくはこちら


財産管理委任契約が効果を発揮する具体的な場面

  1. 入院や手術で、当面の手続きを任せたいとき
  2. 加齢で銀行や役所に行くのが難しくなってきたとき
  3. 判断能力はあるが、体の負担を減らしたいとき
  4. 任意後見始まる前から支えてほしいとき

よくある質問

任意後見と何が違う?

財産管理委任は判断能力があるうちから使え、任意後見は判断能力が低下してから始まります。両者をつなげると安心です。

銀行で使えますか?

金融機関によって対応が異なります。公正証書にし、金融機関に事前確認しておくとスムーズです。

監督する人はいますか?

任意後見と違い監督人がいないため、信頼できる相手を選ぶことが何より重要です。

いつでも始められますか?

はい。契約後すぐに、必要な範囲で財産管理を任せられます。

費用は?

公正証書作成費用と専門家報酬がかかります。任意後見とセットでのご依頼が一般的です。

 財産管理委任は、「今このとき」から二人を支える、いちばん身近な安心です。

6|どれが自分に必要か、迷ったときは

 ここまでご紹介した4つの備えは、それぞれが補い合うことで真価を発揮します。 「遺言書」で財産をパートナーに遺し、「財産管理委任」と「任意後見」で元気なうちから判断能力低下後までを切れ目なく支え、「死後事務委任」で最後の見送りまで託す――この流れがそろって初めて、お二人の「これから」が法的に守られます。


 とはいえ、「自分たちには何から必要なのだろう」と迷われるのは当然のことです。お二人の関係や財産、ご家族との状況によって、最適な組み合わせは変わります。


 どうか一人で、あるいはお二人だけで抱え込まないでください。私たちは、あなたとパートナーの想いを丁寧にうかがい、最も安心できるかたちをご一緒に考えます。 まずはお気軽にご相談ください。お二人のこれからを、法的に、そして心から支えるお手伝いをいたします。